2024/11/09
ノルケイン渾身の新作フライバッククロノグラフの実機を操作してチェック!
ノルケインが2024年9月に発表した「インディペンデンス スケルトン クロノ 42mm」。ブランド初のフライバッククロノグラフウォッチである本作について、実機をもとにその魅力に迫る。
2024年の話題作、「インディペンデンス スケルトン クロノ 42mm」。ノルケイン初のフライバッククロノグラフウォッチだ。ステンレススティールケースモデルとチタンケースモデルがラインナップする。
「インディペンデンス」コレクションから発表された理由
2024年9月に発表され、独自性にあふれたパッケージによって大きな注目を集めている「インディペンデンス スケルトン クロノ 42mm」。本作は、新開発のマニュファクチュールムーブメントを搭載した、同社初のフライバッククロノグラフウォッチである。ステンレススティールケースモデルと、チタンケースモデルの2種がラインナップし、内部機構を詳らかにしたオープンワークダイアルを採用。さらにフライバッククロノグラフとしては手の届きやすい、挑戦的な価格設定であることも魅力だ。
ノルケインのコレクションは、1960年代のクラシカルなデザインに着想を得た「フリーダム」、回転ベゼルを備えたモダンなスポーツウォッチの「アドベンチャー」、そしてフラッグシップである「インディペンデンス」の3本柱で構成されている。同社がブランド初のフライバッククロノグラフウォッチを開発するにあたり、そのベースをインディペンデンスに定めたのは、このコレクションが“イノベーティブスポーツウォッチ”であるからだ。
思えば、インディペンデンスはこれまでにもノルケインの革新性を証明する舞台として活用されてきた。グローバルモデルでケニッシ社製のマニュファクチュールムーブメントの搭載、建築の梁構造をコンセプトにしたスケルトンウォッチ「インディペンデンス スケルトン」、独自のカーボン複合材であるノルテックを用いた「ワイルド ワン」、さらに個体ごとのカスタマイズを可能とした「ワイルド ワン オブ ワン」は、いずれもインディペンデンスコレクションとして発表されたものだ。では、新作のインディペンデンス スケルトン クロノ 42mmが示すイノベーションとは何なのだろうか?
レギュラーながら限られた生産本数のステンレススティールモデル
ブラックのスケルトンダイアルにはサテン仕上げが施され、落ち着いた印象だ。インデックスと時針・分針・秒針のゴールドカラーの縁取りが、視認性を高めつつ上品さを添える。自動巻き(Cal.NN24/1)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約62時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.9mm)。100m防水。ステンレススティールブレスレット仕様:112万2000円(税込み)。ラバーストラップ仕様:107万8000円(税込み)。
レギュラーモデルとしてラインナップするステンレススティールケースモデル。このモデルの魅力は、スケルトンダイアルとクロノグラフというスポーティーな意匠を取り入れているにもかかわらず、上品さを兼ね備えている点にある。サテン仕上げのダイアルが落ち着いた印象をもたらし、秒単位での正確な時刻を確認可能なチャプターリングと、ゴールドカラーの縁取りと蓄光塗料を塗布したインデックスと時針・分針によって、優れた視認性を確保している。
直径42mmのケースは、スポーツウォッチらしい存在感と、取り回しやすさを両立させたほどよいサイズ感だ。幅広のベゼルやラグの上面に施されたサテン仕上げが、力強さを感じさせる。ラグの側面には、繊細なサンドブラスト仕上げが与えられ、立体感を高めている。おなじみのノルケインプレートには、好きな言葉や記念日などを刻み込むことでパーソナライズが可能だ。
ステンレススティールブレスレットとラバーストラップの2種類から選ぶことができる。ステンレススティールブレスレットは、サテンを主体に中央のリンクにポリッシュ仕上げが与えられており、重厚感の中にほのかな華やかさが漂う。三つ折れ式のバックルにはワンタッチで手首回りの長さを微調整することが可能な、マイクロアジャストメント機能が搭載されている。本作のケースは決して軽量ではない。しかし、微調整機構をうまく使うことで、長時間着用しても手首が疲れないように工夫することが可能だ。ゆったりと着用したい場合は、軽量でしなやかなラバーストラップを選択するのもおすすめだ。
なお、本作はレギュラーモデルでありながら生産本数が限られており、限定モデル同様、日本への入荷予定本数がオフィシャルウェブサイトに公開されている。
ノルケイン初! チタン採用モデル
一方、全世界で300本のみの数量限定で販売されるのが、DLC仕上げのチタンケースをまとったモデルだ。実は同社がチタンケースを採用するのは、本作が初である。ブランド初のフライバッククロノグラフムーブメントと、同じくブランド初のチタンケースを組み合わせた数量限定モデルという、まさに特別感に溢れた1本であると言えよう。
ブランド初となるチタンケース採用モデル。他のブランドでもあまり見かけない、パープルカラーのダイアルを採用している。自動巻き(Cal.NN24/1)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約62時間。Ti+DLCケース(直径42mm、厚さ13.9mm)。100m防水。世界限定300本。123万2000円(税込み)
その特別感をさらに強めてくれるのが、パープルカラーのダイアルだ。ケースにはステンレススティールモデル同様にサテン仕上げが施されていることと、ややダークな色合いであることで、派手さのない品のあるカラーリングにまとめている。オープンワークダイアルを通してのぞく、ブラックのムーブメントとのコントラストも楽しむことが可能だ。
本作がケースに採用しているのは、グレード5のチタンであるため、ステンレススティールケースモデル同様に、高級感のある仕上げが施されている点も魅力のひとつ。ラバーストラップはダイアルと同色にそろえられ、統一感のある印象に仕上がっている。
プッシャーの押し心地はどうか、気になる操作感をチェック?
クロノグラフの楽しみは、自ら腕時計を操作し、任意の時間を計測できることにある。本作では、2時位置にスタートとストップ用のプッシャー、4時位置にフライバックとリセットを司るプッシャーが配されている。スタート、ストップ、リセットという通常の操作だけではなく、クロノグラフを作動時に4時位置のプッシャーを押下することで、リセットと再スタート、すなわちフライバックを行うことができる。そして、これらプッシャーの押し心地こそ、クロノグラフ操作の満足感を高める重要なポイントでもあるのだ。
本作の場合はどうだろうか。実際に2時位置のプッシャーを押してみると、少し深めの遊びの後、わずかなテンションをかけることで計測がスタートする。スポーツウォッチでは、誤作動を防ぐためにプッシャーの感触をあえて固めに設定している場合があるが、本作ではそれとは正反対のソフトな押し心地だ。その分、遊びを大きくとることによって不意にクロノグラフが作動してしまうことを防いでいる。スタートとストップを繰り返しても針飛びはほとんどなく、確実な操作感が好印象だ。4時位置のプッシャーは、同様に深めの遊びが設けられているものの、最後の押し込みは多少硬めの設定だ。フライバックの作動も確実。何度繰り返しても各クロノグラフ針が気持ちよく帰零し、瞬時に運針を始める。マニュファクチュールムーブメントならではの上質な操作感は、ユーザーに時間を計測する楽しみを与えてくれる。
フライバッククロノグラフムーブメントNORQAIN 8Kとは
その優れた操作感を生み出しているのが、NORQAIN 8KことCal.NN24/1である。このムーブメントは、スイスのムーブメントメーカーであるAMT社との共同開発によって実現したものだ。クロノグラフの制御には、コラムホイールとスイングオピニオンを採用し、12時位置に30分積算計、6時位置にスモールセコンドを配している。両方向巻き上げの自動巻き機構を搭載し、COSC認定クロノメーターを取得した高精度、約62時間のパワーリザーブと、現代のクロノグラフムーブメントとして一線級のスペックを誇る。
スケルトナイズされた地板と受けにはルテニウムブラックコーティングが施され、サンドブラストとサテン仕上げによって繊細なコントラストが生み出されている。スケルトン仕様らしく、ムーブメント自体の審美性が高められている点にも注目だ。
受けには、ゴールドカラーの「CALIBRE 8K」と「FLYBACK」の刻印が誇らしげに輝いている。8Kが意味するのは、8000mを超える世界最高峰の山々。常に高みを目指すノルケインらしいネーミングだ。
2年ごとに新たな高みに達するノルケイン
2018年に創業したノルケイン。わずか数年で、ミドルレンジを代表するブランドへと成長を遂げた同社だが、その背景には同社の溢れんばかりのチャレンジ精神がある。同社は毎年、時計業界に驚きをもたらしてくれるが、特に2年おきに発表されてきたビッグニュースは、その年の話題をかっさらうほどのものであった。
創業から2年を経た2020年には、ムーブメントメーカーであるケニッシ社との提携を発表。高い精度やロングパワーリザーブ、優れた堅牢性を備えたケニッシ社製のムーブメントは、歴史あるいくつかのブランドへ供給されていたが、創業間もなく規模も大きくないノルケインが提携を取り付けたことは衝撃的であった。
2022年には、ジャン-クロード・ビバーを経営顧問として迎え入れる。時計業界における伝説的な経営者として知られるビバーは、オーデマ ピゲでそのキャリアをスタートし、その後、休眠状態であったブランパンを再興。当時、下火となっていた機械式時計が再び注目されるきっかけを作った人物だ。携わったブランドは、オメガやウブロ、タグ・ホイヤー、ゼニスなど多岐にわたり、それらの現在の立ち位置を見れば、彼の偉大さが分かるだろう。同年ノルケインは、ジャン-クロード・ビバーとともにワイルド ワンを発表。独自素材と優れた耐衝撃構造を備えたワイルド ワンは、同社の革新性を改めて世に知らしめた。
そして2024年に発表されたのが、ブランド初のフライバッククロノグラフウォッチであるインディペンデンス スケルトン クロノ 42mmだ。その特徴はこれまで述べてきた通りである。
同社がこのように成長を続けることができるのは、スイス機械式時計文化を継承するという明確なビジョンを掲げ、その実現に向けた強い情熱を持っているためだろう。上記のいずれの取り組みもノルケイン単独では行わず、ケニッシ、ジャン-クロード・ビバー、AMTと共に開発した。それら関係者の共感を生み、ほれこませるほどのビジョンと情熱こそ、ノルケインの最大の武器なのだろう。
実機を確認したい人はぜひ正規販売店へ
2024年の話題作であるインディペンデンス スケルトン クロノ 42mm。すでに実機に触れたことのある方も少なくないだろう。オープンワーク仕様のダイアルとスケルトン構造のムーブメント、ソフトな押し心地のプッシャーなど、本作は実際に見て触ってこそ、真の魅力を味わうことができるモデルだ。さらに、チタンケースモデルは世界でわずか300本の数量限定、ステンレススティールケースモデルに関しても、明確に数量こそ決まっていないものの、生産が限られている。少しでも興味のある方は、早めに正規販売店に足を運んでみることをおすすめしたい。